葬儀

葬儀とは

ご住職!今日は、葬儀に関して教えてください!

ふむふむ、葬儀そうぎ葬送儀礼そうそうぎれいの略称と捉えると、それは人が亡くなってから埋葬まいそうされるまでの一連の儀式を指すことになるのじゃが、通常は告別式こくべつしきと一緒に行なわれる儀式を指すぞ。今日は、後者の意味での葬儀について説明しようかのぅ。

人は亡くなるとどうなるの?

人は亡くなるとどうなるのでしょう……

日本の仏教ではの、人は亡くなると浄土じょうど涅槃ねはん境地きょうちといった、理想的世界に行くと考えられとるぞ。

その行き先は、浄土宗じょうどしゅうや浄土真宗しんしゅうなどの浄土系では阿弥陀仏あみだぶつ極楽浄土ごくらくじょうど日蓮宗にちれんしゅうでは霊山浄土りょうぜんじょうど、浄土思想を持たない禅宗ぜんしゅう系では完全な涅槃など、様々ではあるが、いずれも、完全に安楽な仏様の世界じゃ。

これは、お釈迦しゃか様の入滅にゅうめつ(亡くなること)を大般涅槃だいはつねはん(偉大な悟り)というように、死こそ全ての執着から解放される完全なさとりであるという思想の流れと言えるかもしれんのぅ。

タイ北部上座部仏教寺院 wat bang kungの美しく知性的な涅槃仏

仏様の世界に行くためには、まず仏弟子ぶつでしとならなければいかんのじゃ。
そのために、枕経まくらきょう通夜つやの中で、剃髪ていはつを行い、戒名かいみょうを授与されるぞ。
そして、仏弟子となった死者を、仏様の世界にしっかりと旅立たせるのが葬儀の第一の目的と言ってよいじゃろぅ。

葬儀の中で、導師どうしである僧侶そうりょが、死者の霊前れいぜんにおいて、死者がこの世への執着を断ち切り、仏様の世界に迷わずにおもむくように仏教の教えを説く。
これを引導いんどうと呼ぶのじゃ。「引導」作法を行なったとき、死者はこの世に別れを告げ、仏様の世界に向かう。

最終宣告をしてあきらめさせるようなことを、俗に「引導を渡す」と言うが、これは葬儀に由来する言葉なのじゃ。
通常、「引導」作法を行なった後に、遺族いぞく会葬者かいそうしゃ焼香しょうこうが行なわれるぞ。

明確な区別がされることはまれじゃが、「引導」までは宗教的な儀式としての「葬儀」であり、その後の焼香は、故人こじんしのびお別れをする「告別式」と分ける見方もあるのぅ。

「葬式仏教」と揶揄やゆされることも多い日本の仏教じゃが、一連の葬送儀礼は、民間習俗と仏教教義が融合して、長い年月をかけて育まれてきた豊かな文化。

しっかりと葬儀の意味を僧俗そうぞくが共有し、生者と死者(ほとけさま)との関係を築く場、遺族の心のケアの場として機能すれば、実りある「葬式仏教」となるじゃろぅ。

……(合掌)

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